楊令伝
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幕末時代小説、北方謙三「草莽枯れ行く」を読む。勝海舟、西郷隆盛、坂本龍馬、土方歳三、岩倉具視、山岡鉄舟、新門辰五郎ら同時代の有名人と次郎長は関わってゆく。任侠の清水の次郎長の目を通して、時代の影に葬り去られた男の清清しい生き様を訴えていく。そして偽官軍として処刑された赤報隊を率いた草莽の志士「相楽総三」にクローズアップ。余程でないと知らない人物だ。怪物 西郷・策士 岩倉に嵌められ、汚名をきせられ志は立たれる。信念を胸に一直線に生き、闘った彼を唯一の友と呼んだ薩摩藩士 益満休之助を登場させているのもおもしろい。
もう一人の草莽にして巨人、坂本龍馬が、休之助に語る。「草莽は枯れ行く。そしてまた新しい草莽が芽吹く。それを繰り返し、無数の草莽が、大地を豊かにしてゆく。やがていつか、その大地から大木の芽がでることもある」
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北方水滸伝 第19巻読み終わる。1年2ヶ月前に読み始め、一気に6巻を読んだ。それから月に1巻ずつしか出版されない。ひと月に1冊。いつも待ち遠しかった。しかし、後半になるにつれ終わらないで欲しいと思った。昔、北方三国志13巻を読んだが、これほどの感動はなかった。三国志フリークだし、三国志物は100冊以上を読み漁っている。自分の中で、キャラクターが出来上がっていて、こういう描き方もあるかくらいの感想だった。しかし水滸伝は、違った。名作だ。同名の人物があるだけでそこには全く違う水滸伝が描かれていた。ありがとう北方謙三さんと言いたい。時間ができれば、1巻ずつ感想を書いていきたい。
あまり本は読まない大学生の息子が、何故か自宅の書斎から取り出し、北方水滸伝だけは読んでいる。この良さは男しかわからないような気がする。それを息子も夢中になって読んでいるのが妙に嬉しい。さてこれで、「楊令伝」にいける。
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北方謙三「波王の秋」を読んだ。時代は南北朝。肥前の浜辺に一人の男が泳ぎついた。密使・竜知勝だった。済州島のナミノオオ水軍は、元と高麗の二重支配から逃れ独立を目指しおり、上松浦党水軍は第3の元寇を未然に防ぎ海を守っていた。竜知勝を通じて済州島のナミノオオは、上松浦党水軍に手を結ぼうと持ちかける。やがて両軍の後押しで、波王水軍が旗揚げされた。若き上松浦党の後継・小四郎を大将として。海を祖国を護らねばならない。熱き思いを胸に秘め、小四郎が立ちあがる。敵は、強大な元朝。海を埋め尽くす大船団へ、必殺「胡蝶の陣」を操り決死の覚悟で挑む。南朝も北朝もない。海に生きる男たちは、陸の領地争いなどには興味を持たず、自分たちを生かしてくれる海を恐れつつ愛してやまない。
「死ぬ時。いまがそうだ、と思った。闘いきった。生ききったということだ。」
継ぐということと、紡いでいくということ。その刹那と恒久の価値が、自分の使命を果たすべき秋(とき)に見出せればよい。決して日本史には登場しない海の男の闘いとロマン。一気に読んでしまいました。
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北方謙三「黒龍の柩」を読む。時は、幕末。時勢は否応なく男たちを呑み込んで行く。土方歳三も、人を斬りながら新選組の活路を探し続けた。親友・山南敬助の捨て身の切腹、同志・近藤勇との別れの予感、弟分 沖田総司の死の予感。近藤は新撰組組長として死ぬことを選ぶ、沖田も剣のみで行き抜くことを考え死んでいく。そして土方は、勝海舟・小栗忠順と出会い新撰組の後の有様を捜し求める。坂本龍馬が暗殺の直前に語った計画に、新選組の未来と己の夢を賭ける。不戦・蝦夷地新国家。しかし、おのが権力に万全を期す西郷がそこに立ちはだかる。ちなみにこの小説で北方は、龍馬暗殺を西郷隆盛陰謀説をとっている。(私は同感)五稜郭での闘いの前の「死を覚悟して闘うが、死ぬために闘うのではない。」という歳三の言葉が印象的だ。
さて函館市には、「碧血碑ヘッケツヒ」という戊辰戦争、特に箱館戦争戦死者を弔う旧幕府軍側の墓がある。「碧血」とは、中国の書 荘子の外物篇にその語が見られる。「藏其血三年而化為碧」。意味は、「忠節に殉じた臣の血は、三年蔵されると碧玉に化す」である。
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北方謙三 南北朝シリーズ「陽炎の旗」を読んだ。これにてシリーズものをすべて制覇。後醍醐天皇の皇子・懐良親王が肥後の菊池武光とともに、九州統一を目指す「武王の門」の後日譚にあたるが、架空の人物によって物語りは進んでゆく。その架空の人物とは、足利直冬の嫡男・足利頼冬、前征西将軍宮・懐良親王が息子・月王丸と孫の竜王丸だ。時は、三大将軍足利義満の時代。天皇家をなくし自ら王たらんとする義満。おのが親王の血をひいているが故に天皇家を一つにしたいと願う月王丸。相反する方法で南北朝の動乱に終止符を打とうとしている2つの勢力下で、男の夢をかけた闘いが繰り広げられる。義満の野望に己の武人としての人生を賭け暗躍する管領職・斯波義将。九州探題の兄・今川了俊の地位を守り、斯波を牽制する今川仲秋、南北朝合一を画策し、敢えて変節漢の汚名をきた楠木正儀(波木)、斯波家の侍大将で頼冬と剣の勝負を決せんとする大野武峰(架空)などキャラクターは多彩だ。虚構のヒーロー「足利頼冬」を通し、歴史の光明を見出す渾身の力作といえよう。そして相変わらず男たちが恰好よい。クライマックスの大野武峰との一戦は、戦闘シーンは短いながら、本を読むだけで固唾を飲むような迫力である。「業のようなもの」「宿運」で、頼冬は、第三者から見ればやる必要のない武峰との戦いに臨む。彼らが賭けているものは何であろうか。「男」。
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北方謙三「南北朝シリーズ」も、とうとう五冊目。あとは、「陽炎の旗」のみ<水曜日に東京にて購入済>。バサラ大名として名をはせた佐々木道誉と足利尊氏に焦点を絞った作品だ。楠木正成・赤松円心・北畠顕家・菊池武光・大塔宮などこの時代、後醍醐天皇にかかわった男たちは、北方謙三により、見事に男の魅力を見せ付けた。今回の道誉と尊氏もおもしろい。バサラ・狡猾・策略家といわれながら終始、尊氏を支えた道誉の心意気は捨てがたい。そして尊氏いてこそ、道誉も輝く。また、ここでは脇役である足利尊氏の心理・生き方が特に巧く描かれており、おもしろかった。しかしそれにしてもこの時代は、複雑怪奇で知られていないことが多く、北方シリーズは、知識欲を十分に刺激してくれた。感謝・感謝。
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北方謙三 南北朝シリーズ「悪党の裔 上・下」を読んだ。播磨の悪党 赤松円心を描いた作品だ。楠木正成が河内千早城で数十万の大群をわずか数百で対峙している時、絶妙のタイミングで播磨にて挙兵。京都へ向かってひた走る。倒幕の流れを一気に掴む。その戦略眼。しかし後醍醐天皇の新政に早々と見切りをつけ、次の流れまでじっと身を潜める。その後、武士の時代は止めようもないと、尊氏を支援。円心は時代の流れを見事に読みきり、悪党として狡猾に生きていく様が描かれている。しかし、そこには、自分の力で世の中(流れ)を動かしてみたいとう夢がある。そしてそれを見事に達成する。善悪を超越して自分の生きる道をひたすら突き進む 円心の生き方は、好き嫌いの分かれるところであろうが、私はこの時代であれば、そうした生き方もあるのかと思う。楠木正成がこの時代の光りなら、赤松円心は影とというところか。
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北方謙三 「楠木正成」上・下 先週読みおえた。南北朝きっての英雄 楠木正成を如何に北方氏が描くか興味があった。夢に賭け夢に滅ぶ悪党としての姿。そこには七生報国も大楠公としての有様も存在はしない。ただ燃え尽きた男の姿だけがある。英雄然とした姿でなく、その一個の人間としての描き方に共感を覚えた。北方「正成」には、桜井の別れも湊川の合戦もいらない。だから書かずに終る。私はそれでいいと思う。また武士の棟梁としての足利尊氏との生き方の比較もおもしろかった。そして相変わらず「男」は恰好いいです。たぶん北方氏が一番惚れているであろう「大塔宮」や「赤松円心」「楠正季」など自分を貫く姿がそこにある。ぜひご一読を。
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北方南北朝シリーズ「武王の門」読みました。九州での男の闘いを見事に描いた秀作です。征西大将軍若宮 懐良親王(後醍醐天皇の一子)と肥後の名将 菊池武光が、九州を統一し、朝鮮半島の高麗や中国大陸の明と接触することで、全く新しい独立国家の建設を夢見るという壮大なドラマ。足利幕府軍、九州の守護たちとの壮絶な合戦。すべてに引き込まれることでしょう。闘う男達の心情を両者の視点から捉える筆さばきは、読む者を興奮させずにはいられません。正直、全く歴史の教科書にも登場しないこの史実を調べて驚きでした。まさに盲点。先月書いた「破軍の星」同様、山の民も登場しますが、倭寇と呼ばれた水軍達も登場します。あぁ こういう闘いもあったのだ感心させられました。そしてやっぱり、敵も見方も「男」がカッコイイからたまりません。ある時は迷い,ある時は立ち止まり、それでも真っ直ぐ前を向いて、自分の生き方に恥じない行動をとる男達。二十数年と長い歳月がそこには流れるが、軸は一歩もずれない。最高の一冊です。
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北方謙三「破軍の星」も読み終えた。最近、とにかく北方歴史物にはまっている自分がいる。ハードボイルド小説家だけあって、とにかく「男」が魅力的なのだ。そこがいい。この小説の主人公は、「北畠顕家」。南北朝の動乱期、わずか16歳で奥州制圧を成し遂げた顕家。逆臣・足利尊氏討伐をめざし、疾風のごとく京へのぼる。勝利・勝利・勝利そして敗北。負けるとわかっていて戦いに身を投じる猛き貴公子の生涯を描いている。顕家は実は風林火山の旗を信玄よりも先に掲げた人物でもあります。日本史史上最も美しくカッコいい武将(公家だが)ではないだろうか。なじみの薄いこの時代を知る上でも、とにかく、かなりお勧めの1冊です。 歴史家に網野善彦という網野史観を唱えた人がいます。簡単にいうと、日本史が定住農耕民中心の記述に偏っているのに対して、それに隠れた様々な漂白民の世界があることを主張したものです。そのあたりを匂わせる一族を登場させているのも見逃せません。絶対にこの小説を元に大河ドラマをやってほしい気がする。
さて、破軍星とは、北斗七星の杓の柄の最初の星をいう。中国では、この方角に軍を進めると必ず破れるという伝説があった。また破軍星は「将軍」をさします。ちなみに榎本武揚が艦長を務めた江戸幕府所有の軍艦「開陽丸」の開陽とは、北斗七星の杓の柄の2番目の星のことで、「将軍」を側で護り従うところからこの名がついたようです。
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先週、札幌出張の移動時間を使って、兼ねてよりの「楊家将」続編である「血涙」を読んだ。運命に翻弄された男たちの叫びが戦場に砕け散る!闘うことでしか生きられない楊家の終わりを彩る壮絶な物語。ただあまりにも筋が読めてしまってちょっと残念であった。間を空けたのが失敗だったのだろう。多分、4冊一気に読むべきなのだろうと思う。しかし繊細な筆は、運命の過酷さに「誇り」を持って立ち向かう男たちの生き様を、中国北部の風景と共に鮮明に浮かびあがらせます。まさに男心を擽る物語ではないでしょうか。吹毛剣 、吸葉剣なんてでてくるので言葉だけでわくわくしてしまうのはガキな証拠でしょうか。さて、実は今困ったことになってい
る。文庫の「北方水滸伝」も読んでいるのだが、6巻まで一機に読んで、文庫はこのあと1ヶ月に1巻ずつ発刊されると気がついたのだ。1年カカル!! ショック!!
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北方謙三「楊家将」を読んだ。時代は、唐が滅んだ後の五代十国時代の後半、宋(北宋)が統一を図らんとしていた頃である。中原に拠った宗が呉越を下し、乱立していた小国のうち残っているのは北漢のみ。しかしこの北漢には、楊業率いる楊家軍あり。楊業は音に聞こえた名将であり、7人の息子たちもそれぞれに一流の武将である。「楊家将演義」前半ををもとに描かれたこの小説は、実にさわやかであった。続編がでているらしい(血涙)が、こちらも是非読みたい。北漢から宋へ帰順し、外様ながら死を賭して闘う楊家軍には、思わず感動してしまう。印象的なのはなんといっても戦闘シーンの躍動感溢れる描写である。騎馬隊のスピード感がまるで映像のように伝わってくる。人物の個性も見事に表現している。敵でありながら、一個の英雄として描かれている「白き狼」こと耶律休哥<ヤリツキュウカ>は、クールでカッコいい。遼の皇后「蕭太后」も有る意味英雄の力量があり、かの則天武后のようだ。戦闘で死んでゆく息子達も、それぞれ個性的だ。あっといううまに読み終えていた。第38回吉川英治賞に輝いている。おすすめの一冊だ。
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